deep down

暮らしの中で私の心が揺れたものを記す場所

Love balloons

 ある日

 デートで出かけた子供向けの催しで

 宣伝ピエロから風船をもらった

 

 真っ赤なハート型の風船 🎈

 

「ラヴバルーンだね」
 彼が笑った

 

 通り過ぎる人たちが羨まし気に2人を見てゆく
「風船と恋の共通点は?」

 

「(心が)浮いている!」
「色んな色、形がある」
「持っていると優越感に浸れる」
「ウキウキする」
「息(気持ち)を入れると膨らむ」
「抱きしめると柔らかい」
「柔軟性がある」
「幸せが詰まってる!」


 お互い交互に答え合う
 笑顔で答え合う

 


 …ふと風が吹いて風船が揺れた

 

 

「人のモノが良く見える」
「風に吹かれフラフラしている」
「どこへ行くか分からない」

「どんどん萎んでく」

「些細なことで壊れる」
「膨らみ過ぎると破裂する」
「手放すと二度と戻って来ない」

 私達は暫く黙ったまま見つめあった
 

 時間だけが流れた

 ゆっくり、ゆっくりと

 

 どのくらい経ったのか

 私は静かに彼から視線を剥がすと

 思い切り手を伸ばし風船の紐をそっと放した

 

 青い空に真っ赤な風船がとても綺麗

 

 風に乗り風船は高く高く空に昇り

 あっと言う間に点のように小さくなった

 

 私は視線を彼に戻しそして呟いた


「自分の意思でいつでも手放せる」


 その後、また見つめあったけど

 そこにはもう恋人の顔はなかった。